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リウマチ診療

Ⅰ 関節リウマチについて

「関節リウマチ」とは、関節が炎症を起こして腫れや痛みを生じる病気です。軟骨や骨が破壊されていくと関節の機能が徐々に損なわれ、最終的には関節が変形してしまう場合があります。

原因

免疫の働き(外部からの異物や異常な細胞を排除する自己防御機構)に異常を生じて、主に関節が標的となって、自分自身の細胞や組織を攻撃して炎症を起こすためといわれています。炎症の悪化を引き起こすものとして、サイトカイン(IL-6やTNF-αなど)という物質などが関与しています。

発症

30~50歳代がピークで、決して高齢者の病気ではありません。また、女性の方が男性より約4倍多く発症するといわれています。現在日本に70万人以上の患者さんがおられ、毎年1万5000人以上の発症があるといわれています。

症状

関節の炎症に伴う関節の腫れと痛みやこわばりのほか、微熱や全身倦怠感ならびに食欲不振などの症状も出現します。

経過

かつてはゆっくりと進行し10年以上経ってから関節破壊が生じるといわれていましたが、最近では、関節破壊の進行は発症後早期(2年以内)から急速に起こることがわかってきました。

発症後の羅病期間と関節破壊の進行

そこで、関節リウマチの治療に対する考え方が昔と今とではがらりと変わり(パラダイムシフト)、本疾患はできるだけ早期に発見し、できるだけ早期に治療することが重要であるといわれています。さらに、発症後2年以内に適切な治療を開始すれば、寛解を達成できる絶好の治療機会の窓(window of opportunity)があるともいわれています。

Ⅱ 関節リウマチの診断

近年、発症早期から強力な抗リウマチ薬で治療を開始すれば関節の破壊を抑えられることが多くの研究で実証され、早期診断を重視した新しい基準(2010 ACR/EULAR関節リウマチ分類基準)が作成されました。

スコア(0-10)
腫脹関節
=1 0点
>1 大関節 1点
1-3 小関節 2点
4-10 小関節 3点
>10 大小問わず 5点
リウマトイド因子 or 抗CCP抗体
陰性 0点
低値 2点
高値 3点
罹病期間
<6週 0点
≧6週 1点
急性期蛋白( CRP or ESR )
正常 0点
異常 1点
各項目の加算が6以上
RAと診断
ただし、DIP、CMC、第1MTP関節
は腫脹関節数から除く
1ヶ所以上の滑膜炎
(他の疾患では説明が不可)

当院でもこの基準に照らして、関節リウマチの診断を行っていますが、この基準でも診断が困難な場合や超早期の病態を把握するために、関節エコー検査を併用しています。

Ⅲ 関節リウマチの治療方針

  

治療目標を患者様とリウマチ専門医との合意に基づいて設定し、その達成に向けた治療(目標達成に向けた治療「Treat to Target」or「T2T」)が現在世界的に推奨されています。
そこで、まず治療の目標は、「臨床的寛解(腫れや痛みなどの炎症症状が全くない状態)」を達成することです。つまり診断が確定したらすぐ薬物治療を開始し、その後定期的に効果判定と疾患活動性を評価し、効果不十分であれば、治療薬の見直しを行う(tight control)という手順を踏みます。ただし、リウマチを長期に患っていたり、リウマチが既に進行している患者様に対しては、臨床的寛解を達成できない場合があり、「低疾患活動性(寛解には至ってないが症状が軽い状態)」が目標となります。
臨床的寛解が達成できたら、今の治療で十分かどうか、また副作用などの安全性も定期的にチェックし、臨床的寛解を維持していくことが必要です。その結果、骨・関節の破壊の進行を抑えられ(構造的寛解)、生活機能QOLが改善し、ごく普通の生活ができるようになること(機能的寛解)が期待できます。

Ⅳ 関節リウマチの治療法

治療法としては、患者様の症状や機能障害ならびに画像所見に応じて、薬物療法・手術療法・リハビリテーションなどが行われます。中でも薬物療法がもっとも重要であり、関節の腫れや痛みを抑え、関節破壊の進行を抑制することを目標としています。手術療法には、増殖した関節の滑膜を取り除く滑膜切除術、破壊された関節を人工関節に置き換える機能再建術があります。リハビリテーションには、関節の動く範囲を広げ、血液の流れをよくして痛みや筋肉のこわばりをとるための運動療法や温熱療法などがあります。

① 薬物療法

薬物療法としては、大きく分けて4種類があります。

消炎鎮痛薬(NSAID:エヌセイド)

いわゆる“普通の痛み止め”で、正式には「非ステロイド性消炎鎮痛薬」といい、通称「NSAID:エヌセイド」と呼んでいます。速効性はありますが、関節リウマチの炎症を根底から改善することはできません。また長期間服用すると、胃潰瘍などの消化器障害などが起こりやすく、注意を要します。
当院では、消化器障害が起こりにくいセレコックス®やモービック®などを処方しています。

抗リウマチ薬(DMARD:デイーマード)

関節リウマチの原因である免疫異常に作用して病気の進行を抑える働きがあります。しかし、効果がでるまでに1か月から数か月くらいかかるため、消炎鎮痛薬を併用することもあります。
中でも、メトトレキサート(リウマトレックス®など)がリウマチ治療の第一選択薬として世界的に推奨されています。これは“アンカードラッグ(anchor drug)”ともいわれており、この薬を土台にして治療法を検討したり、組み立てたりしていきます。副作用としては、口内炎や肝障害・血液障害・間質性肺炎などがあり、必ず副作用のチェックが必要ですが、リウマチ治療の内服薬として最も長期にわたって使用されている薬です。
当院では、そのほかの抗リウマチ薬として、サラゾスルファピリジン(アザルフィジン®)・ブシラミン(リマチル®)・タクロリムス(プログラフ®など)などを処方することがあります。

副腎皮質ホルモン(ステロイド)

炎症を抑える作用が強力で、関節の腫れや痛みを速効的に和らげる働きがあります。消炎鎮痛薬や抗リウマチ薬を用いても、炎症が十分に抑えられない場合に用います。しかし、ステロイドを中止すると、おさまっていた関節の腫れや痛みが再発あるいは服用前より増強(リバウンド)するため、一度使用するとなかなか中止できないことがあります。ステロイドは長期間服用すると、感染症・糖尿病・骨粗鬆症などの副作用を起こすおそれがあり、連用する場合には十分な注意が必要です。ただし、抗リウマチ薬や後述する生物学的製剤の効果が十分みられたときには、ステロイドを中止することができます。
当院では、プレドニン®やプレドニゾロン®などの1mgや5mgの製剤を用いています。

生物学的製剤(Biologics:通称バイオ)

日本では、2003年から次々と登場してきた新しい治療薬です。関節の痛みや腫れなどの炎症を引き起こすサイトカイン(TNF-αやIL-6など)やTリンパ球の働きを妨げ、関節破壊の進行を抑えます。生物学的製剤は抗リウマチ薬の効果が不十分な場合に使用します。この薬は現在7種類ありますが、いずれも注射薬で点滴や皮下注射の方法で投与され、投与間隔も1週間に2回から2か月に1回までとさまざまです。生物学的製剤は非常に効能の高い画期的な薬ですが、肺炎や結核やB型肝炎などの既往歴や発症に十分な注意が必要です。また、いずれも高価な薬ですので、経済的な観点からもリウマチ専門医とよく相談することが必要です。


点滴

(レミケード®・アクテムラ®・オレンシア®・インフリキシマブBS®)


皮下注射

(エンブレル®・ヒュミラ®・シンポニー®・シムジア®・アクテムラ®・オレンシア®)

② 手術療法

関節リウマチに対する手術法として、主に以下の3つがあります。関節の部位と程度によって選択されますが、いずれの手術療法も、薬物療法との併用によって、リウマチの疾患活動性を適切にコントロールして行うことが重要です。

滑膜切除術

関節の滑膜に炎症が起こると、滑膜の増殖・肥大が生じます。それが、関節の痛みや腫れを増強させるため、この滑膜を切除して炎症の鎮静化をはかります。主に、肘や手関節あるいは膝などで行います。

人工関節置換術

関節破壊が進行した場合、骨や関節の破壊された部位を切除して、代わりに人工関節という金属を入れて関節機能の再建を行います。主に、股関節や膝・肘・肩などで行います。


人工股関節

人工膝関節

人工肘関節

人工肩関節

関節固定術

関節破壊が進んで、頻回に脱臼を起こしたり、 支持性が得られなくなった関節に対して、安定した支持性を獲得する場合に関節を固定します。主に、足関節や手関節および頚椎などで行います。


足関節固定術

手関節固定術