頭痛は、一生のうち一度も経験しない方がいないほど、最もありふれた症状です。それほど身近な症状のため、「頭痛くらい」と軽く考えがちですが、頭痛で悩んでいらっしゃる方は非常に多く、慢性的に頭痛がある方は全国で約4,000万人いると推定されています。頭痛がひどくなると仕事や日常生活に支障をきたす場合があります。また中には、背後に生命にかかわる重篤な病気が隠れていることもあり、専門医による的確な診断と治療が必要です。当院では、毎週土曜日の午前に脳神経外科専門医による頭痛外来を行っています。
頭痛はその原因によって、下記のように大きく2つに分類されます。
頭痛の原因は患者様によって様々ですが、その原因が生命に危険性があるかどうかを見極めることが重要です。日本頭痛学会による指針として、二次性頭痛の除外に「危険な頭痛かどうかを簡易に診断するアルゴリズム」(下記)の活用を推奨しています。
二次性頭痛の原因となる病気の中には、突然の激しい頭痛を起こす「くも膜下出血」や、高熱を伴う頭痛を起こす「髄膜炎」、頭痛の強さが数週間の間にどんどん進行する「脳腫瘍」など、生命に関わる危険なものがあります。いずれも迅速な治療が必要となります。また、副鼻腔炎(蓄膿症)や頚椎症でも頭痛が発生することもあり、耳鼻咽喉科や整形外科の受診が必要な場合もあります。
当院の頭痛外来では、頭痛に関して詳しい問診(発生時期・痛みの持続時間・頻度・痛み方など)を行い、必要な場合はMRI検査やCT検査を実施し、その頭痛がまず一次性なのか二次性なのかを総合的に診断します。
慢性頭痛は、15歳以上の日本人の約40%に当たる約4,000万人が悩まされているとされています。慢性頭痛には、ズキンズキンと痛む「片頭痛」、頭全体がしめつけられるように痛む「緊張型頭痛」、片目の奥や側頭部に激痛を感じる「群発頭痛」といったタイプのほか、「薬の使い過ぎが原因で起こる頭痛」もあります。それぞれの患者数は、片頭痛が840万人、緊張型頭痛が2,000万人、群発頭痛が12万人、薬の使い過ぎによる頭痛が120~240万人といわれています。なお、片頭痛と緊張型頭痛を合併する方も多くみられています。
慢性頭痛のうち代表的な片頭痛と緊張型頭痛について、以下に簡単に説明したいと思います。
何らかの理由で脳の血管が急激に拡張して、三叉神経を刺激して起こるのが片頭痛です。片頭痛は、脈を打つようにズキンズキンと痛み、動くと悪化するのが特徴です。
片頭痛かどうかを判断するチェックには下記の6つの項目があります。
1~4の症状のうち2つ以上が当てはまり、5と6のうち1つ以上が当てはまる場合は、片頭痛と考えられます。片頭痛の主な誘因(引き金)としては、月経・排卵や出産後・更年期など女性ホルモンの変化や睡眠およびストレスにも関係しています。
治療としては薬物療法が中心です。アセトアミノフェンや非ステロイド性抗炎症薬などもありますが、片頭痛に最も有効性の高い薬として「トリプタン製剤」があります。トリプタンは片頭痛が起きてすぐに使用すると最も効果を発揮します。しかし、トリプタンは血管を収縮させる作用があるため、脳梗塞や狭心症・心筋梗塞などがある方には使用できません。実際にどの薬をどのように用いるかは、個々の患者さんの状態を把握した専門医の処方が極めて重要です。
慢性頭痛の中でもっとも多いタイプで、約2,000万人の患者様がいらっしゃいます。緊張型頭痛は、頭の横の筋肉や肩や首の筋肉が緊張することで起こります。筋肉の緊張で血流が悪くなった結果、筋肉中に老廃物がたまり、その周囲の神経が刺激されて起こる痛みです。
主な原因としては、精神的・身体的ストレスであることが多く、コンピュータ操作などで長時間同じ姿勢をとり続けている人に起こりやすい病気です。また、筋肉の緊張ではなく、うつ病などの心の病気が原因となることもあります。
緊張型頭痛の治療は、上記の原因からも明らかですが、「片頭痛にはトリプタン」というような特別な治療薬はありません。薬よりもむしろ、身体的な緊張に対しては、筋肉の緊張をほぐす体操をしたり、身体がリラックスするような生活習慣の改善が必要です。また精神的な緊張に対しては、ストレスの発散や心療内科(精神科)の受診が必要な場合もあります。
以上、上記の慢性頭痛のほかにも、さまざまな頭痛がありますが、当院の脳神経外科医が患者様をよく診させて頂いて、個々の患者様の頭痛に合った適切な治療を提供させて頂きたいと思います。
2020年4月の保険改正により、「オンライン診療料」を算定する対象に「慢性頭痛」が追加されました。初診から3か月間以上の対面診察を経て、CTやMRI等の検査を行った上で一次性頭痛(慢性頭痛)と診断され、病状や治療内容が安定している患者様で、定期的な通院が必要な方が対象となります。
当院の脳神経外科専門医による頭痛外来では、2020年9月から従来の対面診察に、このオンライン診療も導入しました。本サービスをご利用できれば、院内の待ち時間の解消や新型コロナウイルス感染に対する感染予防にもつながります。ご希望の方は担当医師にぜひご相談ください。